2003年6月30日 朝日新聞 富山版取材
若手が「温故創新」 新旧合わせた面白み
200年の伝統がある新潟県の加茂桐たんすの若手職人、桑原隆さんら4人が「伝統の解体と新生」をテーマに、新しくデザインしたたんすや小物など40点を展示即売する展示会を、6、7の両日、富山市大手町の富山国際会議場で開く。
使い込んだたんすのリサイクルや桐の植林も手がけ、循環型のものづくりを目指している。
桑原さんは新潟県田上町の工房「桐の蔵」の社長。工房の若手職人らで作るたんすは、洋室中心の集合住宅が増えた現代の住宅事情にも合うように、高さ60センチ~1メートル、幅90センチ~1メートルと従来の桐たんすよりも一回りほど小さい。
しかし、素材は一枚板を使い、塗装は草の種や墨からとったものを使うなど従来と変わらない。引出しの金具は工房独自のデザインで、金物が地場産業の同県三条市の職人に特注している。価格は約20万~30万円が中心だという。
展示会では今春の新作「温故創新シリーズ」を発表する。使い込んで味わいのある色になった桐たんすの引き出し前面の板を、新材で造った桐たんすにはめこんだ作品。金具も古いたんすのものを付けた。
「温故知新をもじって名づけました。新旧のたんすを組み合わせた事で、伝統的な桐たんすにはない面白みが出たと思います」桑原さんによると、2月に地元で初めて開いた展示会には、2日間で約450人が訪れた。小さめの和たんすや、洋室に合うチェストなどに人気が集まった。
「伝統を重んじる地元業界の反応は冷ややかです。でも、来場者からは好評でした」もっと多くの人に見てもらおうと、隣県の富山を2回目の会場に選んだという。
工房では桐たんすの原材料になるキリの植林も進めている。子供の誕生を祝ってキリを植える風習を復活させた。工房から苗木とプレートを買い、管理費を払えば、キリのオーナーとして登録されるという。
「工房が目指すのは循環型のものづくり。展示会ではその一端も見てほしいですね」
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